「社長の手」
6月9日付朝日新聞、
コラム「大志(藤井聡太のいる時代)」より。
元名人米長邦雄氏の言葉に、
「君の手は平社員の手だ。
社長のような手を指しなさい」がある。
目先の駒得など誰にでも利の分かる一手ではなく、
広い視野を持った一手を指してこそ棋士たり得るのだと。
6月3日付日経新聞、
「経営の視点」は「新規事業がつまずく理由」。
あなたは起業家に向いているかどうか。
手っ取り早く判定できる簡単な質問がある。
「料理をする際の手順について聞きます。
あなたは強いていえばどちらのタイプですか?」
A「何を料理するか決めて、必要な材料を買いに行く」。
B「冷蔵庫にある手持ちの材料を確かめ、何をつくるか決める」。
日経新聞の読者の多くはAを選ぶ。
起業家に適しているのは圧倒的にBタイプだという。
成功する起業家には思考パターンの
共通様式のようなものがあることがわかってきた。
まず目標を決め、
そのため必要な資金や技術や人脈などの
経営資源を獲得しようとする目標主導ではなく、
手持ちの資源を
最大限に生かそうとする手段主導の姿勢。
無理に背伸びをせず、
できる範囲でスタートする。
「手段主導」の利点は、
手持ちの材料から始めるので、
ストレスなく起業に踏み出せる。
やたらと緻密な「予測」や「計画」を作るのも意味がなく、
状況に応じた「臨機応変」がカギを握る。
ランチェスター経営のテキストに目標の決め方について、
「目標の規模に手段を合わせるな。
手段の規模に目標の規模を合わせよ」とある。
小さな会社は経営資源が限られており、
ないものねだりしても始まらない。
自社の経営力を客観的に判断し、
競争相手の力関係を考えた上で、
どう自社の強みを発揮できるかを考える。
目先の売上、
目先の利益を追い求めても
長期に利益を計上し続ける企業にはなれない。
起業して失敗してしまう人たちは、
おそらく「平社員の手」を打っているのだろう。
「社長の手」を打つことを考えていこう。